原田ひ香さんの小説「財布は踊る」から学ぶ、クレジットカードのリボ払い・分割払いの罠!
普段何気なく使っているクレジットカード。
何にいくら使っていて来月の支払額はいくらか、自分がどの支払い方法を選択しているか、あなたはすぐに答えられますか?
答えられなかったあなたは要注意!
この記事を読むとわかること💡 ・クレジットカードを使うって、つまりどういうこと? ・リボ払いや分割払いは、なぜしてはいけないと言われているのか? ・リボ払いや分割払いの仕組みと具体的な事例 ・自分がリボ払いや分割払いをしていたら、どうしたらいいのか? ・「財布は踊る」の試し読みができるサイト
「クレカ支払いの状況を見るのって、正直ちょっと面倒くさい…」と感じたあなた。
ぜひ原田ひ香さん著「財布は踊る」を読んでみてください。
きっと自分の支払い状況がどうなっているのか、確認したくてウズウズするはずです(笑)
(出版元の新潮社さんのサイトで、「財布は踊る」の試し読みができます)
みづほの旦那さんのリボ払いのくだりがばっちり読めますので、気になる方はぜひこちらから。
「財布は踊る」では、あるヴィトンの長財布がお金の問題を抱える様々な人々の間を巡っていきます。
それぞれの登場人物には、そのお財布を手にしたい動機や、手にすることで乗り越えなければならない金銭的な危機があったりして、考えさせられるシーンが非常に多くありました。
小説で取り上げられた中でも私が1番やっかいだと感じたのは、「財布は踊る」の主人公、みづほの旦那さんも陥っていたクレジットカードに関する問題です。
最近は年会費無料で作れたり、それこそ未成年でもクレジットカードを持つことができます。
が、その詳しい仕組みや正しい使い方については、事前に教えてもらえることはほぼありません。
そこで、本記事ではクレジットカードを持ったときに陥りやすい3つの問題を解説し、最後に対処法についてお話していこうと思います。
問題1.自分のクレジットカードの利用状況を把握していない
支払いを翌月以降に繰り越すことができるクレジットカード。とても便利ですよね。
今月いくらクレジットカードを切ったとしても、実際に現金で支払いを行う(もしくは口座からお金が引き落とされる)のは翌月です。
そうすると何が起こるでしょう?
当月中の買い物で既にいくら使っているのかを把握しないまま、カードを使います。
そして翌月の支払いタイミングになって、自分が使った金額の大きさに驚くことになります。
もっとよくないのは、更にその1週間後くらいに支払催促はがきが来た場合で、引き落とし先に設定された口座の残高では足りない額を使ってしまっているということ。
つまり、どれくらい使ったのかを把握していないだけでなく、自分の支払い能力の許容範囲(=口座残高)も超えてカードを使ってしまっているのです。
クレジットカードは現金と違って、お財布の中で物理的に増減しないのでお金を使っている実感を得にくく、つい使い過ぎてしまう人が多い傾向にありますが、忘れてはいけません。
クレジットカードを使うことは、カード会社から借金をしているのと同じで返済義務があるのです。
この意識が欠けたままカードを使っていると後に触れる問題に陥り、長期的に悩まされる場合が出てきます。
問題2.リボ払いで、支払い金額が永遠に減らないループに陥っている
「財布は踊る」の中で、主人公のみづほの旦那さんがハマってしまっていたのがこのリボ払いの罠。
主人公のみづほは、2年の貯金と旦那さんの説得を経て、夢だったハワイ旅行に行きますが、帰国後に問題が起こります。
どう少なく見積もっても、旅行中に20万円は使っているはずの旦那さんのクレジットカード。
なのに、旦那さんは支払いはいつも通り3万円だというのです。
いくらなんでもおかしい…と違和感を覚えたみづほは、支払いについて旦那さんに問い詰めますが、旦那さんは面倒くさがって機嫌を悪くし、怒って会話を放棄するばかり。
旦那さんが使うクレジットカードの会社に問い合わせてみますが、本人ではないので詳細を教えてもらうことができません。
どうしても確かめたかったみづほは、電話口の担当者に事のいきさつを話します。
すると声をひそめた担当者から、
「……それはリボ払いになっているのかもしれませんね」と指摘を受けます。
💡リボ払いとは? リボルビング払いの略で、毎月の支払額を一定の金額に固定し、金利とともに返済する仕組みです。 一般的なリボ払いの金利は年利15%と言われており、日本で高い!と非難を受けがちな消費税でも8~10%なのですから、15%は比較的高い利率にあたるかと思います。
みづほの旦那さんは毎月の支払を3万円に固定し、支払い切れない分については、上述のリボ払いの金利がかかり、それ以降の支払いに利息が発生している状態になっていました。
それなら、利息も含めて一括で支払えば問題はすぐ解決。
しかし最大の問題点は、旦那さんが旅行単体に使った分がリボ払いであったことではなく、クレジットカードを作ってから今までの支払いすべてがリボ払いになっていたことです。
具体例と一緒にご説明します。
短期的にリボ払いで支払った場合
まずは旅行単体の費用がリボ払いで、その分だけを返済すればよい場合。
リボ払いで20万円の買い物をして年利は15%、毎月3万円ずつ返済したとします。手数料は以下の式で計算することができます。
手数料=利用残高×実質年率÷365(日)×利用日数
各クレジットカード会社がリボ払いの返済シュミレーターを出しているので、それを活用してもいいかもしれません。今回はLife CARDさんのシュミレーターを使ってみました。
クレジットカードを使った金額が20万円、毎月の支払金額は3万円、実質年率15%を選択すると、返済回数は8回、返済総額は210,126円となることが分かりました。
ページを下にスクロールしていくと、実際に毎月支払いを進めていくことによって、どのように元金(実際に借りたお金の分)と利息(手数料の分)が減っていくのかを確認することもできます。
つまり使った金額は20万円のつもりでも、実際には10,126円多い金額を支払う必要があるわけですが、8か月間支払いを続ければ、旅行の分は完済できることが分かりました。
リボ払いが長期化した場合
しかし問題1で触れたように、みづほの旦那さんは学生時代にクレジットカードを作って以降、自分のクレジットカードの利用状況を把握できていませんでした。
みづほの必死の訴えに折れた旦那さんは、返済義務のある元金があといくらあるのかを確かめるため、一緒にクレジットカード会社で取引明細照会を行います。
すると衝撃の事実。
残りの金額、なんと228万円。(??!)
この228万円を現状と同じ、毎月3万円のペースで返済を続けた場合、元金・利息をどれだけ返せているのかを計算してみます。まずは年間の利息(手数料の分)を出します。
元金228万円×年率15%=342,000円/年
年あたりの利息が342,000円なので、これを12か月で割るとひと月あたり28,500円。
つまり毎月3万円を返済していたとしても、その内の28,500円は利息の支払いに消え、元金はたった1,500円しか返済できていないことになります。
リボ払いの怖いところは、この点です。
大概の人がこの仕組みを理解しないまま、何かの折にリボ払いを設定して継続使用しています。
すると旅行費用のように短期的にリボ払いを利用した時とは異なり、日々使っている分がどんどん元金に加算されていきます。
これでは元金が減らず、むしろ増えていくことも多いため、気づかぬうちに借金の利息を増やし続けていく状態に陥ります。
リボ払いは、一度設定すると解除しなければ継続されてしまい、知らず知らずのうちに借金を増やしやすい仕組みになっているので、設定してはいけないと言われているのです。
問題3.分割払いの回数を増やすと手数料が発生するという意識が薄い
クレジットカードを使う方であれば知っておいていただきたいのですが、カード会社は分割払いが利用されたときに手数料を取ることで主な利益を得ています。
リボ払いも分割払いも、分割される回数が多いほどカード会社の処理の回数が増えるので、その分、手数料率はどんどん増えていきます。
ということは、リボ払いや分割払いの解消を顧客にすすめることは、クレジットカード会社の利益を削ることに直結します。
(「財布は踊る」で、みづほがリボ払いについて担当者に問い合わせた際、それを指摘した担当者が声をひそめたのはこのためです。)
例えば、日本では利用者が非常に多い楽天カード。
楽天カードでは分割2回払いまでは無料(2022年8月1日時点)で利用できますが、それ以上の分割払いの場合には年率12.25%~15.00%もの手数料率がかかります。
これを具体的な数字に落とし込んで見てみましょう。
例えば1万円の買い物をして、それを分割3回払いにした場合、返済金額には年率12.25%の利率がかかります。(100円あたり2.04%の利率)
購入金額1万円×2.04%= 支払いが必要な金額は:10,204円
つまり、1万円のものを買ったのに、分割支払いにしたことで204円を余分に払うことになります。
この例では「たった204円じゃん」という感じですが、恐らく分割払いを検討するときというのは、購入商品の単価が高い場合が多いのではないでしょうか。
上記例は1万円の商品を分割3回払いしたケースなのでこの程度で収まっていますが、ではこれが10万円の商品で10回払いだったらどうなるでしょう?
楽天カードでは10回払いの場合、100円あたり6.8%の利率となっていました。
購入金額10万円×6.80%= 支払いが必要な金額は:106,800円
10万円の商品を買ったのに、6,800円も余分に払うことになります。
お店でカードを切る際、お店側から手数料率の説明がされることはまずありません。
だからこそ「今月はちょっと使いすぎたから分割しようかな…」と軽い気持ちで利用してしまうと、手数料だけでかなり取られてしまい、積み重なればとんでもない金額を払うことになってしまいます。
分割払いは使えば使うほど、手数料が発生するということを覚えておきましょう。
それぞれの問題への対処法
いずれの問題に対しても、まずは現状把握が大事です。
前月いくら使っていて、支払い方法がどうなっているのか、返済金額はないと言い切れる状態か?
いま自分のクレジットカードの利用状況について明言できないのであれば、非常に手間がかかる作業になる可能性が高いですが、以下を必ず実施するようにしてください。
(繰り返しますが、手数料が発生する方がカード会社は儲かります。携帯電話のプラン解約するのと一緒で、作業は簡単でない事の方が多いです)
1.クレジットカードの利用明細をすぐ見れるようにしておく
問題1で触れた、自分のクレジットカードの利用状況を把握してない問題。
これはやはり把握できない状態のままにしておくのが一番よくないので、利用状況を毎月簡単にチェックできる環境を整えましょう。
「財布は踊る」でも、みづほの旦那さんはウェブから確認したいときにできるからと、紙の利用明細書は発行していませんでした。(ウェブでもログインができなくて結局苦労してましたが…)
最近は紙の明細発行に手数料を取られるところも多いので、アプリとの連携をお勧めします。
- クレジットカードサイトで利用額や次月の支払金額についてメール通知が来るように設定する
- クレジットカードの利用明細が確認できるアプリを入れる
- 家計簿アプリなどにクレジットカードを連携する
私も使っていておすすめな家計簿アプリはMoneyFowardです。
▶ダウンロードはこちらから【AppStore/Google Play】
クレジットカードのアプリで利用明細の確認ができれば不要かもしれませんが、毎月何にどれだけかける/かかっているのか等を可視化してくれるので便利です。
連携はそこまで難しくないですが、クレジットカード情報へアクセスするためのログインIDとパスワードが必要になるのでご注意ください。
2.現状の支払い方法を確認し、リボ払いの残高は急いで一括返済をする
まずは1で触れた通りで、現状確認できる環境を整えることをお勧めします。
ですが、もしあなたがリボ払いでクレジットカードを使っているとわかったら。
まずは次回以降の支払い方法からリボ払いを解除することを優先し、みづほたちが行ったように、取引明細照会をして返済金額を確認してください。
これはぜひ「財布は踊る」を読んで疑似体験していただきたいのですが、リボ払いの返済金額がかなり残っている場合は、親族を頼ってでもお金をかき集めてすぐに返す必要があります。
でないと利息が増え、永遠に支払いを続けなければならないループに陥る可能性があるからです。
3.分割払いは利用せず、クレジットカードは原則1回払いのみにする
リボ払いはしていなかったけど、結構日常的に分割払いしてしまっているかも。
そんな方は、一度自分がどれくらいの利息を払っているのかを計算してみてください。
年間に直すと結構な金額になっている可能性があります。
私の分割払いへのおすすめの対処法は、原則1回払いのみを使うこと。
とはいえ、2回までの分割なら手数料が発生しないクレジットカードなどもあり、毎月の生活費の負担を軽くしたい方には利用せざるを得ない場合もあると思います。
そんな時は利率をしっかりと認識しておき、その上でうまく付き合っていきましょう。
まとめ
クレジットカードを使う際には、自分がどれだけの金額を使っていて、どんな支払い方法を設定していて、どれだけの利息が発生しているのかをしっかり把握しておく必要があります。
クレジットカードを使うことは、クレジットカード会社に借金をしているのと同じこと。
それを忘れずに、しっかり利用明細が確認できる環境づくりをして、自分の支払い能力の範囲でクレジットカードを活用していきましょう。
おわりに:「財布は踊る」の試し読みができます
今回ご紹介した「財布は踊る」は出版元である新潮社さんのサイトで試し読みをすることができます。
みづほの旦那さんのリボ払いのくだりがばっちり読めますので、気になる方はぜひこちらから。
簡単に著者の原田ひ香さんについてもご紹介しますと、「ランチ酒」「サンドの女」などが著作として知られており、ここ最近はお金にまつわる本を多く出していらっしゃいます。
特に話題を呼んだのは「三千円のつかい方」。60万部越えの大ヒットを記録しています。
▶「三千円のつかい方」の試し読みはこちらからできます。
私の中の原田さんの印象としては、食べ物や飲み物を囲んで展開される、暖かな人間関係を書き出すのが非常に上手な作家さんで、それは「財布は踊る」でも感じられました。悪者に見えた登場人物でも、どこか憎めないところがあったりして、やはり暖かな人間関係を描くことを得意とされているように感じます。
2022年10月には、著作「一橋桐子(76)の犯罪日記」がドラマ化されて放映開始。こちらの作品でも、高齢者の年金暮らしというお金が絡んだ内容になっているようです。
ドラマ化の詳細が気になる方はこちらから見てみてください!
(※NHKのドラマ制作サイトへ遷移します)
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